ソフトロック

さて唐突ですが、ソフトロックとは・・・


以前クロスで番組をやってた頃は、なんとなく
「ひろ志と言えばソフトロック」的な捉え方をされていました。
僕自身そういった捉え方をされるのは、全然嫌じゃなく
全く違和感もありませんでした。
北九州の情報誌「おいらの街」で、毎月「魅惑のソフトロック」
と題したコラムを書いていましたし、番組とも連動して、
毎月第一週にはソフトロック・コーナーをやっていましたし。
また途中から同時進行していたFM KITAQの番組でも、
2時間に渡るソフトロック特集を、何度か組んだことがあります。


ではソフトロックとは・・・
元々は60年代後半頃に活躍した
アソシエイション、クラシックス・フォーといったグループの
キャッチコピーとして、当時の日本での所属レコード会社が
付けたものであると思われます。
しかしその頃は一ジャンルとして定着した訳ではなく、
同時期に登場した、アートロック〜ニューロック〜ハードロック
に対するものとして使われることは、あるにはありましたが、
あまり市民権を得た言葉ではありませんでした。
それどころか、次第に軟弱な音楽として軽視され始め、
遂にはロックの歴史を語る上で、そんなもの元々無かったような
扱い方をされた時期すらありました。


そのソフトロックという言葉が、一躍脚光を浴びるようになったのは、
90年代に入ってからで、当時渋谷系と呼ばれた若者たちが、
ピチカート・ファイヴフリッパーズ・ギターといった
J-POP・アーティストのルーツとなった音楽に注目。
ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ、
ミレニウム、サジタリアス、ハーパース・ビザールといった、
当時は殆ど無名に近いながらも、高い音楽性と
お洒落な雰囲気を持った洋楽アーティスト達が、
既成の音楽観に左右されない、彼等の耳をしっかりと捉えました。
日本独自でのCD復刻が進み、その動きは海外の復刻レーベルにも
逆輸入の形で影響を与える程になりました。
それまで超入手難だった多くのアーティストが、
それをきっかけにCDで入手できるようになりました。


でもって・・・


僕自身、ここ一年あまりラジオの現場を離れていたこともあって、
今まで作って来た番組や、取り上げた音楽などを、
もう一度客観的に見つめ直してみることが出来ました。
そこでふと思ったことのひとつが・・・
「あれ?我々が若い頃に聴いてた洋楽の中で、
 ソフトロック 〔じゃない〕 ものって、あったっけ???」
まあクリーム、ジミ・ヘンドリックス
レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル等は、
確かにソフトロックとは、到底言えないでしょう。
でも例えばビートルズローリング・ストーンズの曲には、
敢えて「ソフトロック」というカテゴライズをする必要がないだけで、
ソフトロック的要素を持つ曲は、いくらでも存在します。
単にソフトな感じのロックといった広義の場合も然り、
サマー・オブ・ラブに代表されるサイケ色を持つ狭義の場合も然り。


更にそういったビッグネームではなく、
一時的にポピュラー音楽界に登場し、すぐに消えて行った人達の
大半のレパートリーは、今思えばこの「ソフトロック」に該当するのです。
思うにソフトロックとは、一般的に言う音楽の三要素、
つまりメロディー、リズム、ハーモニーを、程よくブレンドさせた、
言ってみれば極めて栄養のバランスの良い音楽ではないか。
したがって万人に安心して薦められる音楽ではないか。
そのように思えるようになりました。


勿論コアなマニアを多く持つようなジャンルのリスナーからは、
薄味だ、もの足りないといった批判を受けることもあるかも知れません。
それはそれでありだろうし、100人が100人とも気に入る音楽なんて、
まずあり得ないでしょうから。
でも少なくとも積極的には嫌われにくい音楽として、
このソフトロックは挙げられるのではないでしょうか?
そしてラジオでの選曲の在り方を考える上で、
強い味方になってくれる音楽なのではないかと・・・。